2018年6月24日日曜日

気配(けはい)という魔法

本棚が満杯になったので整理することにした。
読まない本は手放し、あるいは二段積みにし、とにかくスペースを作る。

古い雑誌・・・2007年の頃の関西の情報誌。
懐かしさに胸の奥がじんわりする。
たった11年前だけれども、街の様子はすっかり変わった。

2006の冬、初めて神戸・栄町に足を踏み入れた。
私が欲しかった世界、もしかして今の人生とは違うパラレルワールドがあるとしたら
そこがこの街で暮らす自分だったのではないかと思った。

掌の上に乗る居心地の良さ、といったらいいのだろうか。
京都の湿度の高い影の濃いアンティークではない、湘南の明るいアメリカ的なシャビーなアンティークでもなく、神戸独特の解放感と明るさ、そして異国との交流で培われた多国籍なセンスを反映したクラッシックで瀟洒なテイスト。
それぞれのカラーがあるオーナーショップでありながら、ひとつのムードがその街には漂っていた。

それから11年、「ali」という最高に素敵なお店にBOCCAのジュエリーが並んでいるのは
2006年にこの街を訪れた私には想像のつかない未来だった。

しかし、良い・悪いという意味ではなく、街の空気は変わっていく。
街も人も、そして人が作り出す物も空間も生きているのだ。

11年前の神戸特集、今は閉じた店もある。ページから立ち昇るあの当時の気配。
ある空気感に向かって、野心に満ちたオーナーたちが創り出した世界。
それは気配(けはい)としか表現できない魅力。
今は今の気配があり、2007年の数年間とは違う。それはたとえ古いものであっても、どのようにスポットを当てるのかという移り行くものの宿命みたいなものだと思う。

気配はあらゆるものを包む魔法のようなものだと思う。
オーラのある人、というのは気配を纏ったひと。
新鮮と感じる内装もそれこそ2年のスパンで変わっていく。
定番の居心地の良さ、と言えるものもどこかに今に合わせた気配がある。そうでなければ、古いウィンドウの寂れたマネキンになってしまう。
エルメスのカレも50'Sの有名な柄に今の気配を落とし込んだ色使いやアレンジで見事に新鮮な一枚に仕上げている。
古典的な技法で焼き上げた鉄さび色の陶器も、フォルムが今の気配だし、逆にフォルムが古典的な場合は素材や技法は新しく今の気配。
気配という掴みどころのないもの、それを見事に捕まえたら心に残り、そして
人が集まったり所有欲が湧く。

気配はいたずらなティンカーベルの魔法の粉なのだろうか。
それとも、私たちの中に潜む、新鮮なものを求める気持ちが創り出す
魔法であり幻想なのだろうか。

たとえ一時期の魔法であっても、濃厚な気配を一度纏ったものは時を経ても
その魔法は解けない。それがページの隙間からだとしても。

                


             














7月の彫金教室。土日開催とお知らせ

7月の彫金教室は
7日(土)/  8日 (日)
21日 (土)/ 22日 (日)

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