2014年9月28日日曜日

いにしえの文字

11月の展覧会 「les amours 1684」 は今から330年前に書かれた文字を使っています。
1684~1685年に記されたフランスの結婚に関する文書。
厚さ15㎝にもなる羊皮紙で閉じられた 紙の束・・・その質量感と文字の迫力にフランスからの包みを解く手が震えました。

1684年は日本では江戸時代。松尾芭蕉が旅に出て、フランスではもうじきベルサイユ宮殿が完成する時期に当たります。
概念では知っているその時代ですが、その息吹が残ったものと対峙する不思議と
向き合うことになりました。

文字を特殊加工して水晶で封じる作品を最初に作ったのは 今から三年前。
その時は1800年代の紙束を手に入れ、その文字の面白さに魅せられて
試行錯誤して作りました。
その後、より発展させて作りたかったのですが、大粒のオーバル水晶が手に入りにくい現実や、文字もただ面白いというだけでは、ジュエリーとして成立しないという事など越えなければならない壁があり、しばらく期が熟するのを待ちました。

そして出会ったのが330年前の愛の文書。
インクの染みに、筆跡に、水晶を重ねた時、今度こそジュエリーとなり得る
美しさに溢れていていました。

時を同じくして、丁度よい大きさの水晶も手に入り、展覧会のメインになる作品が生まれました。
しかし、残念なことに、また20×15mmの水晶が入手困難になりそうで、リピートが難しくなる見込みです。
一つ一つが 出会いの積み重ね。
移ろいやすい美の女神を追って形にしていく作業は、森をさまよう狩人のように思えるときもあるのです。








2014年9月1日月曜日

個展開催にむけて

足指を骨折しているうちに夏は過ぎ、すっかり秋の空になりました。
お陰様でギプスはとれ、少しづつ歩けるようになってきました。
この夏、沢山の思い出を重ねた人、相変わらずの日常の人、それぞれの夏を過ごされた事でしょうね・・・

私はまさに制作の夏でした。
歩けないので、自主缶詰状態。
でも、それは今になって思えは天啓かもしれません。
なぜなら 11月3日からの個展がヒタヒタと近づいて来ていたからです。

ギャラリーでは様々な展覧会がありますが、作家はみなさんスケジュール表と
にらめっこで進行しているという事は共通しているでしょうね。

工芸分野は「気合」とか「根性」とかでは解決できない問題があり、粛々と歩みを進める雰囲気だと思います。
勿論、ベースには気合も根性もあることが前提ですが、何かが天から降りてきて
パッと解決できることが 少ない・・と言っていいでしょうか。
時間がかかるところは、かかる・・・素材が破損する、キャストが不全だった、工具や機械が壊れる・・などと考えたくない事が実際に起こるので、ロスタイムを見極めて進行することが重要になるのです。

一つの完成作品は、「絶対ミスできない山場」を超えてきた、集中力と忍耐力の塊と思って頂いて良いかも知れません。
彫金をはじめ、陶芸・ガラス・漆芸・木工芸・・・ある意味版画も自分の手を離れた所で起こる何かがあるので 似ている部分はあると思います。

絵画などの場合は、また違う苦労もあり、ギャラリーから送られてくるDMを見るたびに 「作品とその旅路をみる」気持ちになります。

先週、DMの打ち合わせをし、ギャラリーのwebでも告知が出ました。
あとは、走りきるだけです。
お越しいただいた方に少しでも楽しんで頂けるよう、良い旅にしたいと思います。

これから、少しずつ個展に向けて旅のもようをお伝えできればと思っています。

  
 Laboratorio di incisione BOCCA Exhibition

          "les amours 1684"
 

  
  会期: 2014年 11月3日~11月9日

  場所: 同時代ギャラリー  ギャラリーショップ・コラージュ
       (京都市中京区三条通御幸町角 1928ビル1F)

       www.dohjidai.com/