2013年11月22日金曜日

フィレンツェへ・・・フラアンジェリコの花輪にまた。

短い旅だったと思う。一つの街を知るには まだまだ始まったばかりと言うところで帰国した、そんな気分。
 
行きたいけど時間切れで訪れることが叶わなかった場所も沢山あって、これはまた再訪するしかない。限られた時間の中で 何を優先するのか、旅は自分の価値観を計るスケール。
 
 
最終日の夕暮れ、アルノ川に映る教会を見ていたら 一人の老紳士が声をかけてきた。彼は美術や京都に詳しく、イタリア語と英語を混ぜて色んな話をしてくれた。(といっても私の語学力では内容的に深い訳ではない^^;)
私は気になる鞄を買うために もう話を切り上げなくてはならなかったのだけども、
その老紳士と河べりの道を散歩する方を選んだ。
美しい夕暮れ、星が瞬く中を なぜか見知らぬ老紳士と歩く私・・・20代の頃、ローマで声をかけてきたのは若者だったことを思うと 老紳士というのも時の流れを感じて内心苦笑いなのだが、それもこれも含めて人生の不思議というか必然というか。
 
イタリア語での言葉を教えて貰いながら 金色に輝くポンテヴェッキオを望む橋でお別れした。また来ることがあっても、多分二度と会わない人。
旅は人生が一期一会であることを容赦なく突きつける。分厚い短編集みたいだ。
 
 

橋の上は広場。夜遅くまで集う人々


日曜日、街の繁華街から少し離れた広場で蚤の市があった。
普通の店よりも難易度が高そう=ボラれるかも・・とか思う人もいるけれど、可笑しいほど蚤の市に集まる人々や店は日本と同じ匂いがした。
住宅街にある広場の日曜日、子供連れや犬連れが多く、フィレンツェの家族を身近に感じたひとときだった。
 活気のある蚤の市。古い布やリトグラフ、軍ものや食器など。
 

 
店番犬たち
 
 
彫金の工具を買いたいとか 特殊な方面に気を取られて うっかりメニューを読む技術を侮った為にレストランでは食べたいものが食べられなかったのが今回の反省。
拙いイタリア語では 親切にしてくれた人、興味の方向が同じ人と充分に会話は出来ず、最終的には 単語に抑揚をつけて気持ちを表したりジェスチャー大会になったり。そして 幾人と握手をしたことか・・結局、嬉しかった、楽しかった気持ちを表現するには 心を込めて握手するより術がなかったと言って良い。
それでも、自分が興味を持った事や美しいと感じたことを間違っていてもいいから口にすると、本当に嬉しそうに対応してくれるイタリアの人達の温かい心根に触れて しみじみ良い旅だったと思う。
 
飛行機に乗る時間があまりに長く、遠い所ではあるけれど、どこでもドアを開けたらすぐそこに見慣れた路地が続く気がする、そんな街。
今ある時間をつなげていって、必ずまたこの街で呼吸をしよう。
圧倒的に美しくて、繊細で優しい・・・フラアンジェリコの描く天使の花輪みたいなこの街で。
 
 
 
 

フィレンツェへ・・・前世占いを信じるならば

唐突な話で面食らうかもしれないけれど、前世って信じる?と聞くと大抵の人は微妙な笑顔を浮かべる。
私はUFOは信じるけれども、前世は「ないでしょ~、人は生まれて消滅するのみ」と思っていた。
しかし、10年くらい前から 好きなものを辿ると悉くフィレンツェに関係していることに気が付いた。
ローマ、ベネチアには行って大好きな街だったけれど、イタリアが自分にハマルという感覚がなかったので、不思議な気がしたが、以前 前世占いというのをしてもらった時に ''あなたの前世は南イタリア出身の石工''と言われたことを俄かに思い出した。
当時は絵を描いていたいたので「石工??」、どちらかと言えばパリやN.Yに親密感を持っていたので なぜイタリア??

しかし、歳を経るにつれてフィレンツェが常に私を呼ぶように感じられた。
絵画、それも教会の壁画、好きと思って手に取る工芸品、ファブリック、みなフィレンツェかトスカーナ地方の出なのだ。
決定的にフィレンツェに行かなければ!!と思ったのは、サントスピリト教会のファザードを写真で見たときの感覚だった。「知ってるよ、ここっ!!」
La chiesa della S.SPIRIT
教会の前の広場は朝から市が立っていて生活雑貨や八百屋、古着やさんが。
素朴な噴水が工房街と学生の多い地域にピッタリ

この教会のファザードの曲線は 私がジュエリーのスケッチを自動筆記の様に描くと必ず出てくる形と一致するのだ。
そして、この教会が位置するのは、家具やジュエリーや額縁の工房が並ぶフィレンツェ随一の地区。
私は前世、この街にいた一介の石工だったと想像してみる。気になって仕方のない街角のマリアを囲む彫刻をしたり、もしかして教会の一部の彫刻を請け負っていたのかも・・いや、南イタリア出身ならば大理石の産地だから、夢中で撮影した教会の床のモザイクを作る職人だったのかも。

この広場を重い工具を手にしながら行き来して、時にはこの噴水の傍で休みながら、ぼんやりとこの教会を眺めて過ごしたりして人生を送ったのかも知れない・・と。大好きなボッティチェリのプリマヴェーラをウフィッチィで見た感激よりも、遥かに強烈な鼓動を感じたマザッジョやギルランダイオ。これはこの絵の近くで仕事をしていたからなのではないかしらん?

とりとめのない想像をしながらも、確信に思えるのは自分の中から生まれるフォルムが、どう考えても郷愁や「知っている何か」を探る行為で、それは日本のものではないという違和感を持ち続けていたから。
フィレンツェの名もない彫刻に熱くなるのは、前世がルネサンス期だったかは分からないけれども、もしかして故郷に帰ってきた証なのではないか、と。
違和感がなさすぎるフィレンツェ、魂の故郷、たぶんね。



 
 
S.M.ノヴェッラ教会の床モザイクは繊細・素朴・キュート
紋章好きには聖地ですよ~
最高にキュートな表情と線
ひたすらカッコイイ

S.M.ノヴェッラ教会中庭。
聖具室にあるショップ、ここのお兄さんが京都外国語大学に留学していた関西弁を話すイタリア人。
「何でも聞いてください」と言うので教会の疑問を色々質問。
「例えるなら伏見稲荷の鳥居のようなもんやな~」とか分かり易い解説を有難う!

 

2013年11月21日木曜日

フィレンツェへ・・・ゆっくり歩いてのんびり話してpart2

フィレンツェのアパートは是非とも工房街にしたいと思っていた念願が叶い、Sprone通りという Bottega(工房、あるいは店舗付き工房)が建ちなぶ場所にあった。
お向かいは 夜中も煌々と明かりを点けているアンティークショップ、隣は壊れた小さな彫刻や古いカップがある工房だった。隣の工房のウインドウ越しに とても雰囲気のある手の彫刻があり、訪ねてみた。そこは、修理を専門にしている工房らしく、東洋趣味の食器もあったが 奥ではモザイクを修復していた。一部、売り物もあったがお目当ての手の彫刻は非売品で工房でも大切にしている品だった。
感じの良い小柄な白衣を着た女性が応対してくれたが、白衣に赤い刺繍糸で工房のマークが縫い付けられていてミーハー的に「かっこいい~~」の世界だった!
彼女に私が彫金をしていること、彫金に使う古い刻印を探している事を伝えたのだが、なかなかそのような品を置いている店は見かけない、との事。でも、もしかしてドゥオーモの裏手にその手の店があるかも知れない・・・との情報を手にその近辺を探しに出かけた。

夕暮れのドゥオーモ裏、老舗の画材店や魅力的な食品店がある中に、歩道にまでオーラが出ている一軒があった。
文具やステッキなどを揃えている紳士的な店構え・・・美しい気配が照明と共に溢れ出していた。気後れするような重厚な店だけれども、誘われるように店に入った。
店主はお洒落で繊細な雰囲気の男性。この店がオーナーの強いこだわりによって成立していることが一目でわかる。 そんな人の匂いは万国共通・・・
シーリングスタンプも味わい深い・・・

欲しかった革箱もずらり
 
紳士の書斎といった雰囲気です

シーリングスタンプは現行モノだけれども、サイズ感やロゴが今までみた品とは次元が違う美しさ・・・さっき シーリングスタンプを他店で買ったのが悔やまれる・・・
しかし、自分用に購入しようと思っていた革箱が、今まで見たことのない色や形で好みの物がズラリと。滲んだモミの木の様なグリーンの小さなジュエリーBOXを購入した。すると、店主がこの箱に箔押し、もしくはエンボスだけのネームを入れることが出来るという。Si!certo!!

まずはロゴを組んでもらい
セットしてインクで紙に試し押し
 
箔を押す機械。興味深々で見ていたらわざわざカウンターに出してくれた。

年季の入ったアルコールランプで文字を圧す機械・・箔なし、金箔、銀箔の3つから選べます。私は金箔選択。箱の形状を考え慎重に場所を検討し、丁寧に金箔を切る仕草、知ってます!知ってます!!これは工芸に関わる人が皆醸し出す動きです!!あ~、同類、嬉しいわ~~、ビデオに撮ってもいいですか~!
という訳で、箔押しをビデオに収めさせて頂きました!

そして、フィレンツェに来て初めて見る鮮やかな手つきの梱包!シーリングスタンプで封をして、それに薄く銀をのせて。
お見事です!Signor!!

このお店の名前は「Scriptorium」
三度の飯より美しい文具が好きという方は是非どうぞ。
特別な時間が過ごせます。












 
 









2013年11月16日土曜日

フィレンツェへ・・・ゆっくり歩いてのんびり話してpart1

普段、旅先に出かけても猛烈な勢いで歩き倒し、夜には足首が痛くなるのが常の私が、体調を崩したばかりにとてもノンビリと街を歩くことになった。
そして、それはとても良い出会いや思い出になった。
 
 
工房街にある美術書を扱う古本屋さんの女性はとってもチャーミングな人で、私の探しているジュエリーの本や好きな初期ルネサンスの本を探してくれた。好みを伝えるのは 本があるので表現しやすく、日本ではあまり紹介されていない画家の画集などを買うことが出来た。
 
 
ドゥオーモの裏手の古いパピエの店。こちらは多分この店の何代目かの若い男の子が接客していた。これは他の店でも同じだけれども、「Questo il regalo,per favore」~「これは贈り物でお願いします。」と言った瞬間から悠長な時間を過ごすことになる。日本の店員の梱包を見慣れている私たちからすると、なんで街に溢れかえるあの凄まじい彫刻や宝飾技術のある国民が小学生並みの包装しか出来ないのかがちょっと不思議であるくらいのレベルなのだ。(日本の折り紙の歴史は偉大である)最初はあまりにも時間がかかる事に焦れていた私だったけれども、逆にこれはその店員さんと触れ合う良い機会だと気が付いた。特に友人たちへのプレゼントを買ったこの店では、夕方でお客さんが他に居なかったこともあり、リボンの結び目を押さえたりしてお手伝いをすることに。フィレンツェの街の面白い場所や私の行きたかった蚤の市の情報などを教えて頂いたりして、楽しい梱包時間を過ごした。使う訳ないよな~~、と思って頭の片隅に放り込んでいた「Le do una mano?」(お手伝いしましょうか?)を使うとは!


お兄ちゃん、苦戦!!

アレッツォにピエロ デラ フランチェスカの壁画を見に行ったときは、ピエロの絵の他に この街が欧州最大の有名なアンティーク市の街であることに胸を躍らせていた。
しかしアンティーク市が開かれるのは第一土、日のみ。多くのアンティークショップや工房はガラス越しに素敵な品を見ながらドアに貼られた電話番号を見ながら電話で店主を呼び出すべきか逡巡することになる。店主はフェアに向けてメンテナンスや買い付けをしているらしい。そうだろうな、平日は静かな静かな中世の街だもん。

この広場でアンティーク市が開かれるらしい。
 


素敵なのに入れない(-"-)

そんな中、どーしても、どーしても、連絡をとりたい店に出会った。19世紀初めに流行った博物誌的なオブジェになったアンティークの品、しかもBOCCAのアイコンである珊瑚がいくつかビューローの上に置いてある店をガラス越しに見つけたのだ。
例によって電話番号のポストイットが一枚貼られている。とにかく、他の店も見て回る事にして、また例の店の通りに戻った。人気のない道をイタリア男性に多いスッキリした禿頭の人が歩いてきた。なんとなくピン!ときて、あの店のオーナーかというとSi!という。やったーーー!
おそらくランチに向かう筈の彼も私の気迫に押されて店に戻り、色々見せてくれた。

割とスッキリした店内
 


教会の聖具も多い。箔か塗りかも教えてくれる。
アンティークショップや市では 日本と同じくカードが切れない店が多い。現金をある程度持ってきていたが 欲しいものは際限なくあり 空腹の店主を待たせて厳選することになった。空腹を我慢しながら、年代、用途、出所、マテリアルを詳しく説明してくれる店主。その上、現金のみなのでかなりの値切りを交渉されて、あちゃちゃ・・という感じであったかもしれないが、そこはイタリア人、とてもフレンドリーな対応だった。というのも、私が彼の選ぶものが本当に好きだという気持ちが伝わったからではないかと思う。海外用に作った 珊瑚が入ったHPの名刺を見せて説明すると 同志的な気持ちになってくれたのかも知れない。
私は日本までの長い旅だからと 赤ちゃんの様に大切に梱包してくれたアンティークの品々を手に 非常に満ち足りた気持ちでアレッツォを後にした。
 
 
旅先で唯一出会った猫さん。

 



2013年11月13日水曜日

フィレンツェへ・・・街角のマリアたち

この旅は4人で 素敵なアパートをシェアしたので、宿泊料金は部屋のクオリティーや場所からしても考えられない程リーズナブルだった。
私以外の三人もそれぞれのこだわりがある大人。ジュエリー関連は私だけなので自然、一人で行動する事が基本だった。

しかも、体調を崩していたので とにかく歩くのもゆっくりと~。と意識しなくても 街には私の美意識を刺激するものばかりで、むしろ速く歩くのが不可能だった。

 建物の壁に埋め込まれているマリアとイエス。彫刻あり、フレスコあり、夜になると照明もつくその立ち位置は 日本の地蔵に近い。様々なバリエーションがあり、素朴な安らぎがある。
ゆっくり歩くを通り越して 目的地に辿り着けないという問題があるくらい。
日本の中でも地蔵盆のある京都・滋賀も同じく街中にこの様な信仰の対象があるので、遠く離れていても近しい精神性を感じてしまう。しかし。その中でキリスト教という宗教に一点透視したイタリアと神仏が緩く絡み合う日本の違いをかえって意識することとなった。イタリアにいて、目の前の精神の拠り所に興味深々な一方、よろずの神を祀り、かつそれぞれの家に代々伝わる信仰がある事の多い日本に思いを馳せながら、古都を流れるそれぞれの精神性を感じながら歩いた。



 

 

2013年11月11日月曜日

フィレンツェへ・・・我が家の様なアパートを借りて

玄関前の中庭
 

フィレンツェに行こう!と決めた時、ホテルに泊まる自分がイメージ出来なかった。
毎日の食事も、全て外食も辛いし、テイクアウトが続くのも味気ない。
どこか、巣篭りできるアパートを借りたいと思っていた。
 
 
Twetterで、フィレンツェ関連のアカウントを検索。
すると、とても素敵なアパートを何部屋も貸しているサイトを運営しているアカウントに行き当たった。
H.Pのブログを見ても、部屋のセンスだけでなく 何となく共通する笑いとかコダワリのツボを感じてフォローさせて頂いた。
 
HPを運営されているのは、フィレンツェ在住12年、こちらの男性と結婚されている
女性。義兄さんが建築家でかつ旅行者向けの短期滞在のアパートを経営されており、彼女は日本人の旅行者の窓口とお世話をしてくださっている。
 
 
今回 お借りできたのは正に出会い。最初に予約確認をした部屋が既に借りられていたところ、まだサイトに上がっていない改装ホヤホヤの素晴らしい場所の部屋があると教えて下さったのです。4人まで滞在できる広さ(しかもそれぞれの階層にW.C、シャワー付き)ということで、とにかく部屋を予約してから 同行人を誘う・・という本当に一目ぼれ状態でスタート。幸い20年来の友人が集まり、シェアするという理想的な形に。
 
市内中央のアルノ川の サンタ・トリニタ橋を渡ってすぐ、憧れの工房街の中にそのアパートはありました。

夜、10時過ぎなのに大家さんの義兄さん、M子さん、ご主人のGさんが出迎えて下さり、素敵な部屋に興奮MAXの私たち。照明、ファブリック、インテリアも最高にカッコよく、気持ちいい・・・
しかし。
実は私は 風邪気味で乗ったパリ~フィレンツェ間の小型飛行機の中で急性中耳炎に見舞われるというアクシデントの中にいました。
この状態に親身に時間を割いて 対応して下さったM子さん、Gさん・・素敵なのは部屋だけでなく、本当に心温かいオーナー一族で感謝してもしきれませんでした。

憧れ続けたこの街で、外に出ず一日を過ごした私。それでも、それが苦痛ではなく、
遠くに鳴る鐘の音を微かに聴きながら 自分の人生を振り返り、日本に残してきた家族を思い、様々な事をじっくり考えることが出来たのは、パーフェクトに居心地の良い空間だったからだと そう思います。
オーナーさん達、友人たちに心配とご迷惑をかけてしまったこの旅。
自分への過信を思い知った旅でもありました。
風邪で鼻が詰まっていて、かつ気圧に弱い人は、Ctiy Jetに乗るときは 点鼻薬やミントキャンデーで鼻詰まりに注意してね。飛行機が揺れるのが怖くてipodを聴いていたのも、気圧変化に気付くのが遅れた気がするのでご注意を。

このオーナーさんのアパートを予約できるサイトはこちらです。帰国したらホームシックになるようなアパートです。
    www.firenze-buonagiornata.com/
「Buona giornata フィレンツェアパート滞在」

Twitter アカウント  BUONA GIORNATA
                                   @agliettamia
 
街路から重厚なドアを開けて、中庭のガラス戸を開けると
 
キッチンの出窓、食器も素敵な品が充分に。
近くにスーパーがあるので、料理も万全!イタリアの食卓を。
ヨーグルト・ローズマリークラッカー・生ハムにハマる。ある日の朝食
2階寝室のコーナー
 
リビング
一階寝室



 

必ず、また来るね!!