2013年6月12日水曜日

アントニオ ロペス ガルシアの光

暗闇では何も見ることが出来ない。光と影により物体を「見える」状態にしている。だからデッサンは 光と影の性質を描き分けること、この事を掴むために、絵画を志す人は鉛筆や木炭で繰り返し演習をする。

アントニオ ロペス ガルシア、スペインを代表する芸術家である。13歳で王立美術大学の入学を許可された早熟の天才。
彼は超絶な写実技法を持ちつつ、様々な技法で 一瞬の光と空気感を表現し続けている。執拗なまでの測量、下絵、そして同じ絵を20年も描き続ける。
そこには 対象となるモチーフから発する光を描き、同時に絵画であることを意識せざるを得ないコラージュを挟んだり、スクラッチのある画面を作ることで、「掴み取られた時」を表現しているように感じる。

徹底的に写し取られた光には 匂いや音までも同時に記憶の底から立ち上がらせる力がある。その瞬間を掴めば掴むほど、時の無常さを意識せずにはいられない。
ある日の食卓、自分とは何にも関係ないはずの家族の肖像画、裏庭のマルメロが重たい実を揺らしていた初夏、冷蔵庫の中の人工的な光、コップの中のカーネーション、マドリードの街並み、それら全てに自分も体感したような規視感がある。

ロペスは私が洋画の学生だった頃からのスターだった。
写実を超えた写実、初期の幻想的な絵、どれも手が届きそうなモチーフでありながら決して容易には近づけない蜃気楼のような画家。
実物を観たのは初めてだったが、画集では分からない絵の肌合いに鳥肌が立った。
そして、本当に好きだと思える作品を前にして、自分を鑑みたとき意外な結論に辿り着いた。私はずっと、自分生みだしてきた作品を愛してきたのだと。彫金、絵画、版画、評価されたもの、されなかったもの、それら全て含めて 私は自分の作品が好きなのだと初めて強く思ったのだった。

アントニオ ロペス展・・・BUNKAMURAミュージアム(東京・渋谷) 7月16日まで
  
               
                          

2013年6月2日日曜日

イメージは聖堂の柱+α

オーダー頂いたピンキーリング。ピンキーリングの女性用は繊細な細いアームに小さな石が入っているのが多いのですが、こちらはボリュームを持たせてみました。
大人の手には ハラハラするほど繊細なジュエリーかたっぷり豊かな質量感のあるものかが似合う、と思っています。
 
こちらは サンピエトロ聖堂の柱をモチーフに、そして、もう一つ、西洋のラッキーアイテムであるフイゴをイメージしています。
ピンキーリングは小指から幸せを逃さない、という意味合いもあるそうです。
オーダーされた女性は素敵な大人の女性。いつも周りに人が集まるオーラを持っておられます。更なる幸運を。