2013年4月13日土曜日

安土・桃山時代の幻想力/狩野山楽・山雪展


京都国立博物館で開催されている 「狩野山楽・山雪展」は 人間の想像力とか幻想力を感じる素晴らしい展覧会だった。(5月12日まで)

近江(滋賀県)出身の山楽は豊臣秀吉に認められ京都・狩野派に属することになった。安土・桃山時代には滋賀と京都が歴史の中心で、秀吉と信長という綺羅星のようなスターがいた夢のような土地柄である。安土・長浜・伏見には 贅を尽くした城が作られ 当然 絵師にとっても最高の職場であった。

作品に漲る画面の緊迫感、余白に意味を持たせる空間美は 1600年代の絵師の美意識が完成されそして 最高峰に立ったのではないかと思わせる素晴らしい作品群で圧巻だった。自然を主題にした作品は 写実でありながら構成は抽象的である。写実であり抽象的というのが、日本の美意識の肝心なところではないかと思う。

人物の多くは中国からの古事に基づいている。
山雪の末期の作品の豊かな想像力は、金箔のたっぷりした輝きと新緑の美しさ、棕櫚や蓮に浮かぶ酒器のリズムに白昼夢を見ている気持ちにさせられた。
また、闌れた襖に施された細い泥金の縁に囲まれて描かれている ツンと鼻腔を刺す雪の匂いがする様な雪景色、師匠・山楽が最後に山雪に手ほどきをしながら共同で製作された 見事な朝顔の巨大な襖絵。どれも 漲る才能と伝承される技術の精華といってよい作品だった。

また、京都狩野派の教科書とも言える「秘伝帳」が初めて公開されている。
こちらは人物の描き分け、樹の幹の特徴などが記されていて興味深い。

美しいだけでなく、虎や猿、水鳥にクスリと笑わせるユーモアがあるのも素晴らしい。
戦乱や疫病のはびこるこの時代に これだけの豊かな文化が花開いたのは奇跡に近い感覚である。

燃えてしまった安土城・桃山城・長浜城は一体どのような絵画が描かれていたのであろうか?それを目にすることが出来ないのは海底に沈む宝箱満載の船を思うようなものであり、つくづく残念に思う。


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