2014年11月20日木曜日

 古いものたちと私 ①

先日終了した京都での個展には ペンダントの素材であり、テーマである
1684年の結婚誓約書の実物を併せて展示した。

何気なくギャラリーに入った老若男女は、一様にページをめくり、紙質を確かめ、びっしりと小石を敷き詰めたアッピア街道のような文字に見入り、そして修正跡のなさを確かめ、何となく喉から押し出すような感じで「いい物を見ました」と去って行かれる
ことが多かった。
音楽を演奏する人は「楽譜のよう」、カリグラフィーをされている人はそのペン先はどんなものであったのか、色々と検証されていた。

古文書慣れをしているルネサンス美術の若き研究者さんは、
目を通しながら「この人、借金がありますね」とクスリと笑い、本をモチーフに絵を描く画家さんは、その本のザックリと止めてある麻紐や羊皮紙の破れをカメラに収め
本という物質感を愛おしそうに眺めておられた。

たった一冊の筆跡がびっしり詰まった本・・・それが与える時間を遡る感覚は
ギャラリーの空間に潜む小さなネジのような役目を担っていた。

私の古いものについての愛着は いつの頃からだったのだろう。
330年も昔の文書を手にし、ジュエリーに仕立てるまでの道のりは
昨日今日の古物好きというわけではないのである。
そして、当然、古ければ何でも良い訳ではない。

そこのところを思い出して記してみたい。

            
                 


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