2012年12月16日日曜日

ダマスク織

ヴィスコンティーの映画を観ていると、好きな景色、室内装飾につい目を奪われ前に進まなくなる時がある。イノセントはダマスク織のカーテンの鮮烈な赤に、この映画の持つ毒を感じずにはいられない。展示会用にオークションで落としたカーテンもナポレオン三世時代の絹のダマスク織。花とフルーツバスケット柄が牧歌的で一目で落札を決意した。イノセントに出てくる貴族の館にも使われているこれらの織物、このカーテンは一体、どんな館のどの部屋を彩っていたのだろう・・・イノセントという映画は無垢であることの悲喜劇を描いている。人間の弱さを徹頭徹尾見せつける。シェークスピア的な悲喜劇といったらいいのか、悲劇であればあるほど滑稽でもある。その無垢は本物なのか、自己欺瞞のため手段なのか、51対49くらいの勝負を女性は生きているのに対して、主人公の男性はまるで赤子のようだ。ラストシーンで館から走り去る伯爵未亡人、彼のあまりの無垢馬鹿さに今まで対等に接していたことに対する間違いを悟って怖くなったに違いない。それでも心が動くことは全て無垢な心の仕業であり、どこかで容認している自分がいる。
                                

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