2012年12月5日水曜日

こんにちは 美少年


ヴィスコンティーの映画を初めてみたのは実は最近のこと。もちろん、存在は20年以上前の学生時代から知っていて 「観なきゃな~」と思いつつ避けて通ってきた。
「ベニスに死す」のデジタルリマスター版が出て話題になったとき この映画を観たとおぼしき人に聞いてみた。「ベニスに死すって どんな?」「う~~ん昔みたけど、おじさんが美少年見て ひたすらモジモジする映画かな」
私の学生時代のヴィスコンティーファンから熱く語られていた映画とはえらい違う印象。
 
 
大学生の時は、なぜか美少年・美少女が好き・・という人と縁があり、その美的審美眼の高さに畏れを抱いていた。その時は そのテの人に萎縮していると思っていてけれど、実は美少年そのものが畏れの原因だった。捉えどころのない存在感、決して手の届かない美の領域、この世界に足を踏み入れると 到底現実の男性とは恋ができないと私の中の雌が警鐘を鳴らしたに違いない。
 
「ベニスに死す」は素晴らしい映画だった。しかし 20代ではこの胸を射抜かれるような切なさは分からないとも感じた。今は美少年を美しい花を愛でるように楽しみ、砂時計のように減っていく人生の残り時間に初老の教授の気持ちを重ね合わせることができる。年齢を重ねる楽しみは、本物の芸術の前でこそ自由に羽ばたき、自分だけの匙加減で味わうことができるのかもしれない。こんにちは、美少年。
 
                           

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